あいまいな着地点

こちらは、Route Mによる、BL,ML(男性同士の恋愛)を主とする小説のブログです。
そういったものに興味のない方はお入りになりませぬように。
また、性描写を含むコンテンツもありますので、18才未満のかたの閲覧をお断りします。
なおすべての作品の著作権はRoute Mに属します。
Copyright (C) 2011 Route M All rights reserved
目次
5
旧ブログ「SIDE CAR」より引越ししてまいりました。
少しずつ作品を移しながら、連載も続けていきます。
こちらに移した時点で、「SIDE CAR」のものは削除していきます。

リンク切れなどお気づきの場合は教えていただけるとありがたいです。
どうぞ、よろしくお願いします。

            目次
全てのコンテンツは、成人向けのものです。18歳未満の方、高校生の方はご遠慮ください。

通販ページ   


天木眞希(レイプ、暴力、自傷、緊縛、男女シーン)
/////////10/11/12/13
/14/15/16/17/18/19/20/21/22/23/
24/25/26/27/28/29/30/31/32/33/
34/35/36(完結)
天木眞希2(家族、ほのぼの)
//
天木眞希3(レイプ、緊縛、羞恥プレイ、暴力)
/////////10/11/12/13/
14/15/16/17/18/19/20/21/22/
23/24/25/26/27/28/29/30/31(完結)
天木眞希4
/////(完結)
天木眞希5
/////////10/11/12/13/
14/15( 完結) 天木眞希番外 天木眞希番外「山賀」

それをあなたは愛と呼びますか・第一部

/////////10/11/12/13/
14 /15/16/17/18/19/20/21/22/23/
24/25/26/27/28/29/30/31/32/33/
34/35/36/37(一部完結)
それをあなたは愛と呼びますか・第二部
/////////10/11/12/13/14/
15/16/17/18/19/20/21(完結) 番外「たぬきねいり」

愛は語らない
/////////10/11/12/13/14/
15/16/17/18/19/20/21/22/23/24/
25/26/27/28/29/30(完結)
番外編(Tasuku)
/////////10/11/12/13/14/
15/16/17/18/19/20/21/22(完結)
番外編(kaname)
/////////10/11/
12/13/14/15/16/17/18/19/20/21/22(完結)

魅せられて(前篇) /魅せられて(後編)スライドショー
魅せられて2
/ / / / / / / / / 10/ 11/ 12 / 13/ 14/
15/ 16/17/18/ 19/ 20/ 21/ 22/ 23/ 24/ 25/ 26/ 27/
 28/ 29(完)
魅せられて・番外・それぞれの○○のかたち(田崎)
/ / / / / / / / / 10/ 11/ 12/ 13
魅せられて・番外・それぞれの○○のかたち(カイ)
 / / / / / / / 8(完結)

魅せられて・番外・それぞれの○○のかたち(ハルミ)
 
/ ////////10(完結)/
魅せられて・番外・それぞれの○○のかたち(カイリ)
/////////10/11/12/13/14
15/16/17/18/19/20/21/22/23/24/
25/26/27/28/29/30/31/32/33(完結)
魅せられて3
/////////10/11/12/13/14/
15/16/17/18/19/20/21/22/23/24/
25(完)   おまけ/
それぞれの○○のかたち(シン) ////////(完)


砂漠の薔薇
//////(完結)
砂漠の薔薇2
/////////10/11( 完)

Chaos Area
////(完結)
Chaos Area2「DOLL」
/////////10/11/12( 完)
Chaos Area3
/////////10
Chaos Area3(番外)////(完結)
Chaos Area番外「秋蘭」////(完結)春英
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| Route M | 目次 | 11:38 | comments(3) | trackbacks(0) | - | ログピに投稿する
「旅人」試し読み
0

    エリック、君の事をどう話したらいいのか、いまだに僕にはわからない。

    友人だったわけでもない、恋人だったわけでもない、それなのに君は、ほんの数週間で僕の心に消えない思い出と、傷跡を残していった。

     

     

    ******

    エリック・バーレルと名乗る青年が、僕たちの住む村を訪れたのは夏季休暇の真っ最中だった。彼は大学生で、スケッチをしながら田舎を旅しているのだと言った。

    初めて森の道からこちらに向ってくるエリックを見つけたのは僕だった。親友のカナンは自分だといって譲らなかったが。だれかが来る気配を感じて、緑に包まれた森を見つめていた僕の目に、近づいてくる青年の姿がだんだん大きくなってきたときのことははっきり覚えている。やせて背の高い彼は、ゆったりと歩きながら僕たちのほうに微笑んで見せた。

    それは、初めての土地を旅することに慣れた人の、相手の警戒心をなくすための笑顔だった。そうして一目で人をとりこにする魅力に溢れた笑顔だった。

    「こんにちは」

    「こ、こんにちは」

    僕たちはどぎまぎしながら応えた。

    ラフな服装をしていたエリックだったが、垢抜けた都会のにおいがした。田舎のがきどもでさえ。その洗練されたものごしと、柔らかな仕草に気後れしたのだ。

    「この村にどこか泊まるところはないでしょうか?」

    エリックは、黒い猫を膝に抱えて、家の前で日向ぼっこしていたアドルばあさんにきいた。耳の遠くなったばあさんは、にこにこ頷いて、握手をしようと手を差し出したので、目を覚ました黒猫が、あっという間に膝から飛び降りて、森のほうへと走っていった。

    もちろん、アドルばあさんはエリックに何を言われたかわからずに、彼の手を握って何度も頭を下げるばかりだった。

    「宿は、な……ありませんよ」

    小さな村だったし、めったに他の場所から人が来ることはなかったから、僕はすぐにそう答えた。

    「そう、どこかの家に泊めてもらうことはできないだろうか?」

    「僕の家だったら、大丈夫です」

    僕の前に体を乗り出すようにしてカナンが言ったとき、僕はがっかりした。

    僕もそう言いたかったのだ。自分の家に泊まって欲しい。この優しげな旅人をもっと見ていたかった。

     僕はカナンをにらみつけたが、カナンは知らん顔していた。

     エリックはカナンを見、僕を見た。それから、ちょっと躊躇うように口を開いた。

    「ありがとう。連れて行ってくれる?」

    そう彼がカナンに答えたのをきいて僕は悲しくなった。けれども、僕は父親と二人で暮らしていたから、この旅人をもてなしてやることもできないとすぐに気づいて余計に悲しくなった。大抵父か僕が食事の支度をしていたが、食べられればいいという程度のものばかりだった。

    旅人は歩きながら、カナンと僕の名前を聞いた。自分は大学生で、森を抜けたところの岩山の絵を描きたいのだと話してくれた。彼の名前がエリック・バーレルだと知ったのもそのときだった。僕はもう無駄だと思いながらも、なんとかこの旅人が家に来てくれないだろうかと、そればかり考えていた。

    自分のことを話したあと、エリックは僕らの名前を聞いた。

    「クロウ、君の家もこっちのほうなの?」

    エリックが聞いた。僕は首を振った。カナンの家とは反対方向だったけれど、この人と離れがたくて、ついてきてしまったのだ。もっとも小さな村だから大した距離でもなかったが。帰ろうとしたとき、父がこちらへと歩いてくるのに気づいた。

    「お父さん!」

    大またで急ぎ足でこちらに向ってくる父は僕を見つけると笑った。日に焼けた精悍な顔つきの父は、息子の自分から見てもどぎまぎするほどカッコよかった。質素な作業着の下の、綺麗に整った筋肉がついた逞しい肉体も憧れだった。自分の細っこい身体を僕はもてあましていたのだ。

    近くまで来ると父は、エリックを不思議そうに見た。エリックはまたあの魅力的な笑顔を浮かべて自己紹介をした。

    「岩山に行くのか? よかったら、明日案内するが。不慣れな人間がよく迷う場所だ。」

    父の言葉に僕は胸が躍った。またエリックに会える。僕も一緒に岩山に行こう。うまくすれば僕の家に泊まってくれるかもしれない。もっと話ができるかもしれない。そんな様々な思いが次々に浮かんだ。エリックは嬉しそうに、案内をして欲しいと言った。

    小さな刺激のない村では旅人は珍しく、ほかの場所の話を聞けるチャンスだった。けれども、それだけではない魅力を僕はエリックに感じていた。

    翌日、カナンに連れられてエリックは僕の家に来た。僕とカナンも二人について岩山に向った。他の十代の友人たちと村の広場で遊んだりするより、今はこの旅人と一緒にいて、外の世界の話を聞いたり、彼の描く絵を見たいという気持ちのほうが強かった。

    たぶん、カナンも同じだったのだと思う。

    森を抜けていきながら、父は、野性の木苺の実をとってエリックに渡した。宝石のように輝く赤い実をエリックは嬉しそうに太陽に透かした。それから、口に入れると、

    「おいしい」

    と微笑んだ。僕もカナンも嬉しくなって、見つけるたびにエリックのところに運んだ。ひんやりとした森のなかは緑の苔が柔らかな絨毯のように敷き詰められていて、ところどころに残る水滴が輝いていた。可愛らしく伸び始めた蔦の小さな葉っぱが柔らかく、木々を縁取っていた。

    その一つ一つにエリックは目を輝かせていた。

    森を抜けると、切り立った岩山が見えてきた。それは巨大な一枚岩でできていて、灰色の岩肌はざらざらしていた。一見平らに見える面には亀裂やひっかかりがいくつもあった。慣れている人間はどこに掴まり、どこに足をかければ岩山を登っていけるのかわかっていた。地図のように、進む方向を頭に入れながら、そこを登っていくのだ。

    もちろん父も僕も、カナンも慣れていた。エリックが父の後を上っていき、僕とカナンがその後に続いた。父は、場合によっては崩れやすくもろくなる岩を確かめながら慎重に進んでいた。

    僕は、もしも、彼が上るのに、苦労したり滑り落ちそうになることがあったら、手を貸すつもりで足を踏ん張って上っていた。けれどもそんなことはなく、華奢に見える人は思いがけないほど器用に岩山を上っていった。父が彼を気遣いながら、いつもよりゆっくり登っていたせいもある。

     

    岩山の上に登りきったときには太陽は真上に来ていた。

    「慣れれば、もっと早く登れるようになる。」

    父の言い方はぶっきらぼうだったが、僕は父がこんなに話すのをきいたことがなかったので驚いていた。エリックの柔らかな笑顔が父の心も惹き付けたのだと思った。

    僕と父は昼食のためのサンドイッチを用意していた。僕たちは平らな岩の上に座って、それを食べた。

    目に入る一帯には、登ってきた岩よりもっと赤みがかった岩の連なりが奇妙な景観を作っていて、エリックはすぐに夢中になった。スケッチブックを取り出すと、色鉛筆でその景色を描き始めたのだ。

    僕らは黙ってそれを見ていた。真っ白なスケッチブックのうえに、さまざまな色が塗り重ねられた、赤や緑や黄色の岩の色には見えない色鉛筆の色が、重なるにつれて、立体感を持ち、次第に本物の色に近づいていくようすに僕は夢中になった。それはとても素朴なのに美しいものだった。

    夢中でスケッチしているエリックを見ている僕らはなんとなく落ち着かない気分だった。あまりじっと見ているのもいけないような気がするのに、真剣なエリックの表情から目を離せなかったのだ。エリックは僕らがじっと見ていることにも気づいていないようだった。

    一時間ほどでエリックは一枚の絵を描き終えた。それからはっとしたように、僕たちの顔を見た。

    「すいません、つい夢中になってしまって」

    僕たちは、顔を見合わせて笑った。エリックという青年の魅力に完全に取り付かれていたのかもしれない。邪魔をせずに彼のそばにいられたことでほっとしていた。

    岩山を降りると父は、今夜泊まりにこないかと持ちかけた。妻は他界していてたいしたおもてなしはできないが、と父が言うと、エリックは、自分が料理ができるからかまわないと言った。僕の胸は躍った。エリックが来てくれる。

    (略)

    「触りたい……」

    そう言うとセナは笑った。僕の体をひっくり返して、僕にまたがるようにしてきた。

    「どこに」

    「腕」

    セナの腕が僕の口元に差し出される。僕は舌を伸ばして、張り詰めた筋肉を、滑らかな肌を舐めた。けれど、もっと触れたいところがあった。

    「咥えさせて……」

    僕は懇願した。でも自分から望んでではなく、無理やりのようにそうされたかった。

    「ひどくして……」

    その言葉でセナは僕の気持ちを悟ったようだった。

    「かわいそうに……けど、他の人の前でそんなこと言っちゃだめだよ。本当にひどい目にあうことになる。」

    セナの言っていることはわかっていた。僕が求めているのは、ただのプレイだった。それ以上のことをされたいわけではない。

    人から見られることを切望しても、レイプされたり、輪姦されたりしたいわけではない。脅されたり、本物の暴力をふるわれたいわけでもない。

    セナの言葉に僕は頷き涙をながした。

    セナのペニスが口元に突きつけられ、乱暴に僕の口を犯した。僕はそれに舌を絡め、飲み込もうとするように、喉の奥まで受け入れた。セナが激しくそれを出し入れする。喉の奥に押し込まれるとえづきそうになりながら、僕は必死でそれに奉仕した。そんな自分に酔った。

    エリックとのことで、すでに目覚めかけていた自分の被虐性が、露になった瞬間だった。髪を掴まれ、一方的な要求に従わせるようでいて、セナは時々、思いがけない優しさで僕に触れた。けれど彼の行為は優しいと同時に残酷でもあった。あふれ出しそうな欲求を抱えた体は、煽られ、達する寸前で放り出された。あごがはずれそうなほど、僕の口のなかで膨張したものをセナが、僕の後ろにあてがったとき、僕は喜びで叫びだしそうだった。

    からからに乾いた砂漠で、水を与えられたようなものだった。だが、セナが僕のペニスに巻きつけられた包帯をはずさずに行為に及んだとき、僕は失望と、もっと先にある快感の予感に体をふるわせた。みっしりと密度のあるものが僕を押し開き、暴いてきた。乱暴ではなかったが、容赦のない一突きでセナは僕を支配した。

    「ああああ!」

    僕は声を限りに叫んでいた。どうにかなってしまいそうだったのだ。熱が、からだの中で荒れ狂う熱が、あふれ出した。僕は腰をふり頂点を目指した。

    決して到達することのできない、幻のような頂点を目指した。もどかしさに泣き出しそうになると、セナの手が、包帯からはみ出した僕のペニスの先に爪を立てるようにした。

    痛みと同時にするどい快感がつま先まで痺れさせた。

    「いやあ、あああ!」

    僕は叫び、まったく射精することなく達した。力を入れすぎたふくらはぎが攣ったように痛かった。

    「こういうのは初めて?」

    こくこくと頷く僕の目から流れ出す涙をセナは拭ってくれた。

     

    「今度はちゃんと達かせてほしい? それとももっと我慢できる?」

    セナが聞いた。イカせてほしかった。けれども、もっと我慢させられる自分を見たかった。

    「我慢する」

    セナは笑った。そうして優しく包帯に包まれた僕のペニスを撫ぜた。

    ゆっくりと包帯をほどく。目を見張る僕にセナはもう一度笑って見せた。

    「君はこれなしで我慢するんだ。いいね」

    僕は頷いた。

    (以下略)


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    | Route M | 通販 | 06:25 | comments(0) | trackbacks(0) | - | ログピに投稿する
    通販
    0



      通販のお知らせです。

      傷本のお知らせ

      「天木眞希」2冊「それ愛」3冊のみですが、ダンボールの底から取り出したり、搬送するうちにカバーがすれてしまったもの、折れ曲がってしまったものが出ました。500円引きにて販売いたします。

      ご希望の方は傷本と明記してお申し込みください。


      「旅人」文庫サイズ130ページ カバーなし

      ・内容(18禁)
      「旅人」
      「エリック」
      「絵」
      ある夏の日、旅人エリックは村を訪れた。一目で彼に惹かれたクロウだったが、エリックが愛したのは、クロウの父親だった。それぞれが境界線を越えてしまった日、エリックは村を去っていった。
      エリックへの自責の念と、父親への憧れの狭間で苦しみながら、クロウは堕ちていく。試し読み
      ・1000円(送料80円)メール便
      ◎こちらは予約になります。お届けは8月下旬になりますのでご了承ください。


      眞希カバー「天木眞希」(再販)文庫本456ページ(表紙4ページを含む)フルカラーカバー

      ・内容(18禁)

      「天木眞希」1〜5……掲載済み

      「番外・クリスマスの夜に」……現在未掲載

      「番外・その夜」……現在未掲載

      「番外・北の地にて」……書き下ろし・掲載予定なし(28ページ)
      3000円(送料290円)郵便小包


      「それをあなたは愛と呼びますか」文庫本296ページ、フルカラーカバーつき

      未掲載分50ページを含みます。眞希も再登場です。お楽しみに!

       ・内容(18禁)
      「それをあなたは愛と呼びますか 第一部」
      「それをあなたは愛と呼びますか 第二部」

      「罠」(旧題 眞希VS潤) 未公開

      「罠2」未公開20ページ

      「たぬきねいり」

      「ビヨウシの名前」

      「天使の消えた日」未公開30ページ
      3000円(送料290円)メール便

       ■申し込み方法

      ◎件名 『通販』にてお願いします

       メールアドレス、住所、本名、欲しい本のタイトル冊数

      メールを受け取りましたら、返信をしますのでご確認ください。

      二冊の場合は、ゆうメールでのお届け(送料340円)になります。

       

       右側のメールフォームよりどうぞ

      メールフォームが見られない方は、こちらへ→routeyroutem-onyahoo.co.jp (■を@にかえて)

       

       

       

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      | Route M | 通販 | 11:39 | comments(1) | trackbacks(0) | - | ログピに投稿する
      魅せられて(前編)
      0

        「湊・J・カイリ君だ。」

        担任教師、沢村と言っただろうか、が、黒板にでかでかと俺の名前を書いた。

        「よろしくお願いします」

        俺はにこりともしないで、教えられた席に座った。

        転校生が珍しがられるのなんて、最初のうちだけだ。どうせすぐに他の生徒の中にまぎれてしまえる。そう信じていた。

        思いっきり無愛想にしていれば、クラスメートにかまわれることもないかわりに、いじめの標的になることもない。無視されるというのは、俺にとってはいじめのうちには入らない。

         

         

         

        ******

        「お前なんでミドルネームがあるの?」

        学食でそう聞かれた。

        綺麗な顔、こんなやつ、同じクラスにいたっけ?

        「親がクリスチャンだったから」

        「ふーん、で、なんて呼べばいいんだ? 湊? ジェイ? カイリ?」

        「どれでも」

        実際名前なんてどうでも良かった。その名前をつけた親も、もういなかった。

        「あんたは?」

        俺は、相手の名前を知らないことに気づいてそう尋ねた。

        「ハルミだ」

        「ハルミ? 女みたいな名前だな。」

        「まあな、なあ、あそこにいるやつ。」

        俺は指さされたほうを見た。どう見ても高校生には見えない五六人の男たちの中に、ひときわ体の大きな男がいる。高校生というより凶悪犯に見える。

        「いかれてっだろ。桑田っていうんだ。近づくな」

        は? と、ハルミを振り返ったときには、ハルミは学食を出て行くところだった。

        「なに見てんだよ」

        凶悪犯の桑田の取り巻きの一人が、すぐ脇に立っていた。

        俺はハルミに嵌められたことに気づいた。

        見てない、見てない、と一応首を振って否定してみる。

        だが、男は俺を桑田のところまで引きずっていった。

        ひええええーーー

        こんな奴、まともに相手にするのも怖い。

        「お前、何て名前だ。」

        俺は答えなかった。

        「ぶん殴る前に名前を聞いてやろうと思ったのに」

        桑田はそういって、立ち上がった。

        次の瞬間、その巨体からは想像もできないほどの鋭いパンチがとんできた。

        俺は思いっきり体を引いた。

        反射神経だけはずば抜けている。

        だが、桑田はよけられるとは思っていなかったようだ。

        反動で、体がぐらつく。

        俺は思わず、足をかけてしまった、桑田の体が音を立てて床に倒れた。

        その振動で、テーブルの上のトレイが跳ね上がり、桑田と周囲の男たちに、まだ熱いコーンスープが注がれるのを、俺はスローモーションのように見ていた。

        もちろん、自分の服は汚れないところまで、遠ざかっていたが。

         

        まずい、と思って、俺はダッシュで、学食を後にした。

        何よりまずいのは、昼食を食べ損なったことだ。

        転校第一日目にして、一番目をつけられたくない奴に目をつけられてしまった。

        俺がクラスに戻ってしばらくすると学食で起きたことが伝わったらしく、クラスメイトの気配が微妙に変わるのがわかった。

        明らかに敬遠されている。

        いや、そんなことはどうでもよかった。

        それより、俺は自分を嵌めたハルミって奴を探していた。

        「なあ、ハルミって、このクラス?」

        隣の席の奴に聞くと、ぶんぶんと音がしそうに首を振った。

        知らない、関わりたくないというわけだ。

         

         

        その日の授業が終わらないうちに、桑田から呼び出しがきた。

        なんて、お決まりのパターン。

        何時間でも待ってろ。いかねえよ。

        俺は正門を通らずに、学校を取り囲んでいる低い塀を乗り越えた。

        低いといっても、クラスから運んだイスを使用したが。

        手ごろな木がなかったのだ。

        「悪い、戻しといて」

        隣の席の奴に頼んでおいた。

        ものすごく嫌そうな顔をしながらも、隣の席の……何ていったっけ、名前を覚えていない奴は、戻してくれそうだった。

        案外いい奴かもしれない。

         

         

        「ふーん、おりこうさんじゃない」

        学校の外に着地したとたんに、声を掛けられた。

        学食で話しかけてきたハルミって奴だ。

        「ランボーみたいに正面から闘うのかと思ったら」

        「冗談、あんなやつまともに相手にするかよ」

        そう、相手にするつもりはなかった。

        なにしろ逃げ足にだけは自信がある。

         

         

         

        桑田は毎日のように俺に呼び出しをかけた。この前のように校内で恥をかかされたくはないらしい。

        俺は相変わらず、校内でもクラスでも、誰からも話しかけられなかった。

        みんな桑田を恐れていたのだ。

        俺と関わると桑田の恨みを買うと思ったらしい。

        それを非難する気はない。正しい判断だ。

        俺も桑田を相手にする気はなかった。

         

         

        だが、その日は違った。無視するわけにもいかなくなった。

         

        俺の下駄箱に手紙が入っていた。

        「田崎を預かった。返して欲しかったら、〇〇に来い」

        とある。

        誰だ、田崎って……預かったという以上、俺の知り合いに違いない。

        俺は靴をはいて歩き出した。

        だいたい来いといわれている場所さえわからない。

        地図くらい描けよ。

        そう突っ込みを入れながら、俺は正門から堂々と帰った。

        もちろん呼び出されたところに行くつもりもなかった。

         

         

        ほとんど家に着きかけたところで俺の携帯が鳴った。

         

         

        無言の着信を切ろうとしたときだった。

        「湊くん……」

        情けないほど小さい声が聞こえた。

        「だれ?」

        聞き覚えのない声だった。

        「あの……田崎です。隣の席の……」

        「なんか用?」

        俺は呼び出しのことをすっかり忘れていた。

        「ふざけんじゃねーぞ」

        聞き覚えのある声ががなりたてていた。桑田だ。

        俺は携帯を持ったまま家に入ると自分の部屋に行った。

        とりあえず喧嘩に使えそうなものを用意する。

        薄い鉄板を腹に入れ、サラシをまいた。コインを詰め込んだブラックジャックも用意する。

        「で? どこ行けばいいんだ?」

        説明させながら、痴漢撃退用のスタンガンと唐辛子入りのスプレーも用意した。

        卑怯などと言っている場合ではない。よく知りもしない級友を人質に取る時点で、まともな神経をしていないことはわかっている。

        しかも相手は一人じゃない。

        これからの学校生活を安泰にするために、やるんなら徹底的にやる。と俺は決めていた。

        田崎が捕まっているのは、海岸の林の中の倉庫らしい。

        責任あるよなあ。俺が逃げるときに使ったイスの片付けなんか頼んだから目をつけられたのだろう。

         

         

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        魅せられて(後編)
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          俺は自転車で、海の近くまで行くと、教えられた階段を登って、倉庫まで行こうとした。

          そこに人影があった。

          「ハイ」

          ハルミが立っていた。

          「お前と悠長に会話してる暇ないんだけど」

          俺はハルミの脇を通り抜けようとした。

          「相手、二十人くらいいるけど」

          はああーー二十人だと!

          「スタンガンやとうがらしスプレーじゃ足りないんじゃ……」

          何で知ってる?

          「本当に用意してあるんだ。」

          俺が目を丸くしているのを見て、ハルミが笑った。

          「助っ人しようか?」

          「要らん」

          「あと二人いるけど」


          aqua green moonのサイアートさんからいただいた画像です。著作権はサイアートさんに属します。お持ち帰りはなりませぬ) 

          よく見ると階段の上のほうに、もう一人背の高い影が、さらにほうの手すりの凭れ掛かってもう一人。脇にバイクが置いてある。どう見ても高校生って雰囲気じゃない。

          どことなく玄人っぽいのが嫌だ。

           

          「なんで、俺を助けるんだ」

          「いろいろね、こっちにとっても都合がいいから」

          「要らん」

          そう断って、俺は階段を駆け上った。

          のんびり立っている男を軽くにらみつけると、男が笑った。

          「いいの? お友達、輪姦されちゃうかもよ」

          げっ! 俺は思わず男の顔をまじまじと見た。

          「で、その映像を残して恐喝するのが桑田のやり方だから」

          ごくりと俺はつばを飲み込んだ。とんでもない相手だ。

          背に腹は代えられない。運の悪い同級生にそんな犠牲を払わせるわけにはいかない。

          「あんたら、なにが目的なんだ。」

          「別に」

          手すりに凭れている男がけだるげに答えた。こちらも、女が見たら、キャーキャー言いそうなイケメンである。

          「そっちがシンで、もう一人がカイ」

          走り出した俺についてきながら、ハルミが紹介した。

          俺は覚える気もなかった。

          といいつつ、すでにハルミの名前だけはきっちりインプットされていたが。

           

           

           

          倉庫は馬鹿でかかった。

          中に二十人というのもありえる。

          なんで、海岸の林の中にこんなものがあるかが謎だ。

          どうせああいう奴らが悪いことするためにだけある倉庫だ、かまったことはない、つぶす、と俺は決心していた。

          倉庫の窓の外にあるドラム缶の上に上って中の様子を確かめる。

          田崎がまっぱで吊るされているのを見てめまいがした。

          あいつら本気かよ。

          寒そうな級友に俺は同情した。

           

          「俺が先に行くから後は頼んだ」

          呼び出された当事者が一番入りやすい。

          「あ、不利になったら、電気消して」

          ペンチを渡そうとすると、ハルミが笑った。

          「もってる」

          胸の中からペンチ出してを振って見せた。

          用意周到なことで。

           

          俺は正面の扉を開けた。

          「きたぜ」

          桑田がにやりと笑って、俺のほうを見た。

          「あんまり遅いから、やっちまうところだったぜ」

          「放せよ、そいつ」

          「やだね。まずお前を拘束してからだ」

          「拘束してどうするんだ。」

          「輪姦すのさ。ビデオにとって、売る。売れるだろうなあ」

          そういう目で見られたこともある、実際口説かれたこともある、けど、

          「相手くらいは自分で選びたい」

          俺は、スニーカーを振り上げて、寄ってきた取り巻きの一人の顔を蹴った。

          「うあわああーー」

          男が悲鳴を上げる。当たり前だ、スニーカーにも鉄板が入っている。倒れた男の肋骨辺りをきっちり踏んでやる。

          「足のしたで肋骨が砕ける音が好き?」

          ハルミの声だ。

           

          同時に、何かがヒュンという音とともに風を切ってとんだ。

          白く光る、あれは、ナイフだ。

          ぶら下がっていた田崎がそれを受け止めた。自分で綱を切って、着地した。

          (後)

           

          「さいてーーこいつら、俺のオキニのシャツ切りやがった。」

          な、なんだ、この豹変ぶりは。

          いつの間にか、シンとカイも入ってきている。

          二人とも一発で相手を床に沈めている。

          どう見ても素人の技じゃないぞ。

          ハルミのペンチは相手を殴るために使われている。

          容赦なく、楽しそうにペンチをふるっている。

          やだよ、こんな暴力集団。こっちがいじめてる気になるじゃないか。

          そう思いながら、むかってきた桑田の顔をめがけて、痴漢撃退スプレーを噴射する。

          こぶしで相手をしても良かったが、ま、せっかく持ってきたことだし。

          あんまり素手で触れたくないタイプの顔だし。

          「うわあああ!」

          かわいくない声をあげて桑田が転げまわる。だろうな。スタンガンはいらなかったか。

          「そいつの肋骨俺に踏ませて」

          田崎が飛んできて両足で、桑田の腹に乗った。

          全体重を乗せている。

          「俺をやろうなんざ、百年はやいんだよ」

          おいおい、それはいくらなんでも……

           

          まっぱの田崎に俺は着ていたジャージを脱いで差し出した。

          刺激的な裸体だ。

          「だっせーー」

          可愛くないことを言って田崎が俺のジャージを拒んだ。

          そばによってきたカイが自分のコートを差し出すとそちらは受け取った。

          結局俺が5人倒す間に、その他はすべて地面に転がっていた。

          「20人いるって言わなかったっけ?」

          「いるだろ」

          カイが答えた。確かにいるかも知れない。

          だが俺はまだスタンガンも使ってないし、腹に入れた鉄板の威力も試してない。

           

          「手ごたえなさすぎ? つまらなかった?」

          田崎が笑う。

          「お前って……」

          「そ、おとり、お前を呼び出すための……」

          「なんでこんなめんどくさいこと」

          「なんでって、これが俺らの仕事だからな」

          「しごと〜〜〜」

          「そうそう、学園のダニを退治してくださいって頼まれたのさ。」

          ハルミが足先で、倒れている男をつつく。うわあ、かっこいいかも。

          つつかれている男はどう見てもやくざだ。

          「ま、高校生だけじゃなさそうだけど。」

           

          そういうことかと俺は納得した。四人とも妙にものなれているはずだ。

          せっかく仕込んできたブラックジャックは使う必要もなかった。

          「じゃ、じゃあ、なんで俺を巻き込んだんだ」

          最初から、ハルミは俺が目をつけられるように仕組んでいた。

          「スカウトだよ」

          「は?」

          「スカウト。あんた、マッドマックスって呼ばれてるだろ。いろんな学校でたいした戦歴残してるらしいじゃない」

          冗談じゃない、たまたまいじめられて仕返しをしただけだ。

          こっちから仕掛けたことは一度もない。

           

          「ま、でも、助けに来てくれたわけだし、とりあえず、お礼」

          近くまでよってきた田崎が、まだ下半身裸のままで、俺の唇にちゅっと音を立てて唇を押し付けた。

          それが、俺のファーストキスであることに気づいたのは、五秒も過ぎてからだった。

          「な、ななな……なにしやがる」

          よく見ると田崎が可愛らしい顔をしていることに気づいたのは、さらに五秒後。

           

           

           

          「学校楽しい?」

          ハルミが聞いた。

          「おべんきょー好き?」

          田崎も聞く。

          「俺らの仲間になんない? 学校専門のお掃除屋さん」

          「なんで、俺が……俺は普通の高校生だぞ」

          「普通の高校生がブラックジャックとか、スタンガンもって、喧嘩するか?」

          カイが言う。にやりと笑った口元が、ものすごく好みだ。

          「あれは身を守るために仕方なく。転校するたびにいじめられるから、だんだん増えてったんだ。」

          「負けなしって聞いたけど?」

          シンも続ける。ほどけた髪を後ろで縛る、その仕草が色っぽい。

          どきりとさせられる。

           

          「相手が弱すぎるんだ。」

          俺は答えた。

          ハルミが声を出して笑った。

          「来いよ、楽しもうぜ」

          口元にクレイジーで妖艶な笑みが浮かぶ。

          『足のしたで肋骨が砕ける音が好き?』

          さっきの言葉が蘇る。

          うわっ、田崎も可愛いし、他の二人もいけてるけど、こいつもめちゃめちゃ好みかも。

          どエスっぽい雰囲気がたまらない。

           

          ハルミの顔に見惚れていると、チュッとキスをされた。

          セカンドキスだと気づいたのは五秒後で……

          俺は無意識に背中に手を回していた。

          綺麗な顔をのけぞらしてハルミが笑った。

           

           

          スカウトに来た四人が、四人とも俺の好みだったのは、決して偶然ではなかったと知ったのは、ずっと後のことだった。                     (おしまい)


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